今年もふるさと納税を考える時期が近づいてきた。毎年何かを試されているような気分になり、やや元気がなくなる。今年は試しにしないことに決めてみた。
任意の自治体に寄付をすると、返礼品がもらえる上、そのほぼ全額が控除されるというこの仕組みは金銭的な面では得しかない。一方で、寄附税制としてはそもそもあまりに全ての面で冗長であり、ついでに不要な競争をも生みうるこの仕組みを自分は端的に言ってクソ制度だと思っている。
やらないと損するが、賛同できず与したくない制度、というものが自分にもたらすストレスというのはなかなかなものである。自分の中の効率厨の心はやれと叫び、偏屈な心は悪しき制度に加担するなと叫んでいる。しなかった場合は、金と引き換えに自分の本意が遂げられるかと思えばそうではなく、悪しき制度を運用する側に多めに金を払うわけであるから、結果として体制側に利するわけで、清らかな筋が通ることはない。
ここで、「得やん〜」と言いながら無邪気にふるさと納税をする人と、自分のようにごちゃごちゃ言いながら結果的にはする人を比べると、全く無意味な気持ちの逡巡のコストの分、後者の損っぷりはすごい。どうせ損するなら行くとこまで行ったるわい!(ふるさと納税せず)というのが今年である。
この話のアナロジーとして広告との関わり方というのがある。大衆に、時には不必要な消費を迫るCMの音楽を作ることで最近の自分は飯を食っているわけである。ふるさと納税と違い、よい部分もあるので根底からなくなるべきとは思わないが、悪い部分に直面するような場面も年々増えている。ここでの自分もまさに”ごちゃごちゃ言いながら結果的にはする人”の様相である。ごちゃごちゃ言ったところで赦される領域が増えるわけでもなし。そして、最近の世の中はこのごちゃごちゃいう人をよく思っていないようなムードがあるように思う。
某日
色々な思惑もあり授業後にふらっとメトロに遊びに行く。企画側であったロシさんに「最近もいい感じにやってんね」と褒められる。ロシさんは自分が記憶する限り、会った際は大体いつも褒めてくれる。関西の若手ミュージシャンについて色々聞かれたので答える。「いやー稼働してんねー」みたいなことを最後に言われる。まさかこの数日後にこの世を去るとはつゆも知らずに。
面倒を見る、と気に掛ける、の間くらいのコミュニケーションのことを最近よく考える。中途半端なコミュニケーションを可能にするのはいつだって中途半端な場所である。ちょっとズレた自己開示をするチャンスと、それをよしとする人間がこの世には少なすぎる。
6月某日
the band apartが3rdアルバムの完全再現ライブをするというので観に行く。一曲目のイントロで川崎氏がリードのフレーズを完外ししている様子を見ながら、なんて最高なバンドなんだと思う。キッズの頃はわからなかったが、改めて(語弊を恐れずにいうのなら)本当に変なバンドである。若かりし頃の自分がちゃんと正しく変な音楽を作り、変な演奏をする人間をかっこいいと感じれていたことは素直に嬉しい。ここでいう”変さ”というのが自分の人生のテーマであるとも思う。
7月某日
新宿歌舞伎町ZERO TOKYOにてGOLDDISKなるイベントに出演。ライブセットなのにトリである。気分が良くなったのでそのまま繋ぐ形でUSBで数曲DJして締め。自分比で相当アッパーにしていったつもりでも、毎度このシーンはさらにアッパーである。
いつぞやマゴチに「4つ打ちでキックがなっていること自体が本質的にオーディエンスに負荷をかけている(し、だからこそよい)」みたいな話をされて以来、クラブミュージックを負荷の高い低いで測る癖が付いている。デチューンが掛かったSAW波のコードスタブも負荷であるし、SINE波をサブローで鳴らしても負荷である。無負荷はつまらないし、過負荷は疲れる。粋な配分で負荷を時間軸に沿って配置していく、というのは本当にセンスだなと思う。
7月某日
メトロでdrop-inなる平日イベントを開催。持ち込まれた楽曲データをその場でCDJで再生していく組手スタイルはやはり面白く少し延長。平日なのに知らない若者がたくさん来て、たくさんの曲が聴けてよかったです。
自分もいい年になってきたので、「有村さんに曲を聴いていただきたく・・・」みたいな感じで恐縮して話しかけてくれる人が徐々に増えてきたが、年齢もキャリアも関係なくみんなで曲を聴かせ合いたいので、この人に認められたい、みたいなのは一旦なしでいきたい。おれも曲を作って持ってくるし、みんなもそうしてほしいわけである。この辺は慣れの問題であるから、こういう催しを続けていればみんな慣れてきて、いい意味でもっとフランクになっていくとは思う。ナメすぎるのも憧れすぎるのも結局はディスコミュニケーションの問題である。続けていくうちに色々普通になって、みんながフラットに会話できるようになる頃には、いい感じのシーンになっていると思います。
7月某日
京都ワールドでDJ。晩飯会場にいくとオカモトレイジさんとヨウジイガラシさんの2人。陰湿な自分と比べて2人の初対面コミュニケーションはこなれている。
DJはどこにも振り切れないまま持ち時間が終わってしまってやや反省。自分の次のレイジさんはJPOPにガン振り。自分のごちゃごちゃやる感じが思い切りのなさとして出てしまった感じはする。レイジさんが使っていたRCA出力でSEが鳴るおもちゃの光線銃がかなりよく、帰り道にネットで注文。のちにフジロック で活躍することになる。
某日
o-nestでconvex mirror e.p.のリリパ。前日に思いつきで作り始めたZINEのおかげで作品に対しての頭の整理ができている感じがある。一方完全単独自主企画なので準備に余裕がない。一方控え室にパーゴルとtomgggさんがいるので妙な安心感がある。2人とももう出会って10年経っているので恐ろしい。来てくれた中村佳穂さんはモンゴルの話をしている。
ボロ雑巾を絞るようにヒイヒイ言いながら作った2nd3rdなどと違い、今回はかなり無邪気に色々試すエチュードと言った感じで、作品自体、というよりは自身の在り方という面でなかなかの手応えがある。来てくれるお客さんのことも正しく信用できていて、音楽自体だけでなく姿勢も含めてちゃんと理解してもらっているという実感があり、なんかもうそれだけで満足してしまっている感じもある。パーゴル&tomgggの両先輩もトマソンスタジオ同窓会的なアフターの面々も、いちいち細かいニュアンスを説明するまでもなく共有できているものがあり、音楽を続けるっていいなーとしみじみしながらのプレイでした。来てくれた人はありがとうございました。
某日
デイナイト通しのリリパ終わりの朝、新幹線で帰宅。京都駅から電車に乗る気力すらなく家までタクシー。泥のようなコンディションでタクシーを降りるとnanoのスタッフのミキティが道を歩いていてあいさつ。仮眠して授業。そのままメトロで出演。
疲れすぎてSawa Angstromの演奏が天からのお迎えのように感じられる。帰宅も全部の移動をタクシーて済ませて気絶。
某日
ぬのさんぽのテーマソングを演奏してもらうためにゴリラ祭ーズの3人とスタジオで内容確認。鍵盤ハーモニカやリコーダーの音域についてあまりに無知すぎたためそこも確認。終わった後はガストで飯。自分は彼らから見るとインターネットにいる謎のインチキおじさんであるわけだから恐ろしい。一方でSAKEROCKのライブに行くことに高校時代を費やした自分から見ると、ゴリラ祭ーズは早いうちに音楽をやる友達ができたパラレルワールドの嘘の自分を見ているような気持ちになってしまったりもするが、そういうのは人に託すものではない。彼らなりに頑張ってほしい。
某日
スタジオシンポでぬのさんぽのテーマソングの楽器録音。スマートにこなす船越くんと、おれが行き当たりばったりだったせいでやや負荷をかけられ苦労する平野くんのコントラストが面白い。終わった後はコイズさんと雑談。御池レコーディングシーンをもっと盛り上げていきたい。
某日
フジロック行きのために一旦東京へ。みなと合流して車で苗場へ。道中は意気揚々である。苗場でNTsKiちゃんとJinyaさんと合流。飯食ったり酒飲んだりしてダラダラ過ごす。ホワイトのPeggy GouのDJっぷりを眺めながら自分にない要素はこれだなーと思う。
日付変わってのGANBANステージはちょうど皆がオアシスらへんに人が集まるタイミングで、自分が出る時間はちょうど人が多くてよかった。ステージからお客さんがよく見える。新潟の山中で、たくさんの友人に見守られながら自分の曲をかけ過ごす時間は本当に感慨深いものでした。ありがとうございました。誕生日を迎え33歳。贅沢なバースデーでした。これからもよろしくお願いします。
イノウ終わりにふにゃふにゃになりながら苗プリで爆睡し、帰りは運転。EOUが海に行きたいというので日本海側から京都へ。道がひらけていて走りやすい。途中眠すぎてEOUに交代。ウエストハーレムに帰ってきた時、妙に修学旅行みを感じてしまった。
某日
ぬのさんぽのテーマソングのボーカルRECのため世田谷へ。黒沢ともよさんが一人ででスタジオに来ていて驚いた。ユーフォ3期完走直後であったので言いたい話は山ほどあったがあえてせず。まだ連載の始まっていないマンガのキャラソンのボーカル録音というのは、キャラのイメージがまだ明確になりきっていない状態で実施されるわけであるが、黒沢さんは(ボイコミの収録が別途あったにせよ)なんとなく歌うことなく、まだ世に現れていないキャラの人となりや、それに伴う発声を正しくしたいという意思を持っていて、さすがだなーと思ってしまった。さすがだなーとか思っているうちは、自分はまだ意識が低いわけであるから精進である。エンジニアの増田さん東宝スタッフの皆さんもお世話になりました。